Brexit: 脱退と除名

June 28, 2016

Brexitレファレンダムの結果公表後、「post-Brexit」の秩序構想を描く論考が数多く出てきております(ノルウェー型、スイス型、トルコ型、FTA型、WTO型・・・BBCTelegraphLaTribuneFrance24LeMonde)。もっとも、レファレンダム自体は英国内の政治的意思決定プロセスであり、国際法的には、リスボン条約第50条(これもすでに有名な条項になりつつあります)に基づく脱退意思の通知を欧州理事会に対して行ってはじめて、「post-Brexit」が現実のものとして見えてくることになります。とはいえ、正式な「通知」は、キャメロン首相によれば後任者(10月着任予定)が行うとのことなので、当面は「待ち」の状態になりそうです。

 

もっとも、こうした不安定な状態を有利な交渉カードとして利用されるのを防ぐためか、仏独伊首脳は、リスボン条約第50条に基づく通知があるまでは一切交渉に着手しないと言明しております。こうした膠着状態が仮に継続してしまうとなると、それがEUの更なる不安定化を招来するとの懸念からであると理解できますが、これをラディカルに(ただし法的に)推し進めていくと、(Grexit:ギリシャ債務危機に関連して主張されたように)加盟国の自発的な脱退を待つのではなく、国際組織(EU)の側から英国の除名を求めていく途は無いかが問題となります(実際、早くもオプションとして少しだけ検討する論者がいます)。

 

この点、国際組織からの「除名: expel」の例としては、1939年のソ連の国際連盟からの除名や1954年のチェコスロヴァキアのIMFからの除名など、いくつかあるようですが、いずれも除名の手続に関する明示の条約規定を備えた国際組織からの除名であり、同様の明示規定が無いEUの場合にどうなるのかが問題となります。条約の「重大な違反」に伴う条約終了(VCLT60条)、事情の根本的な変更に基づく条約終了(VCLT62条)などが一般国際法上は想起されますが、それらに必ずしも直接的には拠らない「デフォルト・ルール」を模索する議論(あくまでギリシャを念頭に、ですが)も、あります。

 

とはいえ、いずれの論理構成に拠るにせよ、そうした「除名」を基礎づける何らかの違反や重大事情がBrexitの場合に何になるかが別途問題となります。レファレンダムそのものがEU法違反であるはずがなく、レファレンダム後、英国が「as soon as possible」に欧州理事会にリスボン条約50条に基づく通知をしないことが違法というのもやや無理があるかと思います。この点、離脱派が示したframeworkによれば、レファレンダム直後に(つまり「通知」前に)EU分担金の一部拠出停止を決定する法案が構想されています。仮にこのシナリオ通りに事が運ぶとすれば、英国はEU加盟状態を維持した段階でEU法上の義務に違反する可能性が出てきますが、さすがにその可能性は低い、といえますでしょうか。

 

6月29日:表現を微修正しました。

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